でんでんのブログ

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オートガイダーの設定/性能確認

8月の観測時にMGEN3とNINAの連携でオートガイドのディザリングがうまく動いていないのではないかという疑惑があったが、今回はこの動作確認と、ついでに他のガイダーの機能/性能確認を併せて行ってみた。

(ディザリング不良疑い→ビクセン・ワイヤレスユニット購入 - でんでんのブログ

まずMGEN-3オートガイダーについて、今回改めてテスト用に撮影を実施。機器構成は以下の通り。

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赤道儀:AZ-GTi

鏡筒:BORG55FL+reducer

カメラ:ASI294MC

ガイドカメラ:MGEN-3

ガイド鏡:KowaLM100JC

撮影ソフト:NINA

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NINAへのMGEN-3の接続は問題なし。

NINAにオートガイダーとしてMGEN-3を接続したところ

赤道儀(AZ-GTi)の接続も問題なし

NINAへ赤道儀を接続したところ

ディザリングの設定はMGEN-3で条件の設定、NINAで有効/無効の設定を行う。

ディザリングの条件設定はMGEN-3側で行う。移動量は3pixelとしている。

試し撮りはNGC7293でおこなった。撮影中の進捗画面では、1撮影毎にディザリング動作が行われていた。

テストなのでゲイン高めで短時間露光で30枚撮影

撮影した30枚を比較明合成した結果がこちら。

30枚を比較明合成したところ。一応、位置はずれているがこれで正しいのか?

拡大してコンポジット画像と比較

拡大して確認すると、一応位置はズレてディザリングされているように見えるが、ひとかたまりの範囲と、少し離れた3か所程度に移動しているようで移動の規則性がよくわからず。ここでようやくMGEN-3のマニュアルでディザリングの仕様を確認してみた。

マニュアルには以下のように記載されている。

------MGEN-3マニュアルから抜粋ーーーーーーーーーーーー

Dithering shifts around the guide star in a random way, but not further and further away from the initial position of the first exposure, rather it stays in its vicinity. The size of this area is controlled by the dither diameter (in pixels of the Mgen-3 camera). If it is necessary to choose another position as a reference, go to the Control page and check the new reference pos. box. The new positions calculated during dithering will now be spread around the new initial position.

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これによると、ガイド星の周りを、指定したピクセルの範囲内でランダムに移動するということらしい。撮像結果で、固まりの範囲内でうろうろしているように見えるのはマニュアルの記述と一致しているが、3か所ほど離れた位置に移動しているのはイレギュラーな動きで何らかのガイドエラーがあったのかもしれない。

ディザリングは仕様通り実行されていそうなことが判ったが、今の設定(3pix)ではディザリングの移動範囲が狭く、ディザリングの効果が不十分ではないかと思われる。撮像に使うイメージセンサ上で数ピクセルずらせばディザリングの効果はあるらしいが、ガイドカメラのピクセル数とどういう関係で、設定をいくつにすればよいかまじめに考えてみる。

ここで考えないといけないのは、ガイドカメラの1ピクセルが、撮像カメラの何ピクセルに相当するかということになるので、最近よく使っている鏡筒、CMOSカメラ、ガイドカメラの数値を確認してみた。

ーー[鏡筒・CMOSカメラの組み合わせと、1画素当たりの画角]ーー

(1)EdgeHD800 + ASI294MC(4.63um)
    ATAN(4.63um/2000mm)=0.000133(deg) = 0°00'00.48"

(2)BORG107FL + ASI2600MC Pro(3.76um)
    ATAN(3.76um/600mm)=0.000359(deg)= 0°00'01.29''

(3)BORG55FL(x0.8)+ ASI294MC(4.63um)
    ATAN(4.63um/200mm)=0.00133(deg)=0°00'04.78"

 

ーー[ガイド鏡・ガイドカメラの組み合わせと、1画素当たりの画角]--

(A)SV165 + QHY5III485C(2.9um)
    ATAN(2.9um/120mm)=0.00138(deg)=0°00'04.98"

(B)BORG25 + QHY5III174C(5.86um)
    ATAN(5.86um/175mm)=0.00192(deg)=0°00'06.91"

(C)MGEN-3(3.75μm)
    ATAN(3.75um/100mm)=0.00215(deg)=0°00'07.73"

 

以上を参考に、ディザリングの設定は以下の方針で設定してみる予定。

・ディザリングの1回の移動量は、撮像用CMOSカメラ上で最低5画素程度を目安にする

・撮像枚数が増えた場合にディザ移動量が大きくなりすぎないよう、合計で50~100画素程度の範囲にする

 

例えば(3)BORG55FLに(C)MGEN-3の組み合わせであれば、MGEN-3の1ピクセルがASI294MCでは1.1ピクセルに相当し、MGEN-3での設定ピクセル範囲内をランダムに移動するということなので、60pix程度を設定する。

 

続いて、(2)BORG107FL+(B)PHD2ガイドの比較明合成の画像も確認してみた。

BORG107FL+ASI2600MC pro 21枚ディザリングの比較明合成

拡大画像。21枚撮影で150pix程度の範囲を移動


PHD2のディザリング設定は”Random”モード、ディザリングピクセル数は5pixとしている。上で計算した1画素当たりの画角の関係から、ガイドカメラの5pixelは撮像用CMOSカメラの27画素に相当するため、MGEN-3の実験画像に比べるとかなり大きく移動しているが、21枚撮影での移動範囲は実測で150pixel程度と、たまたま程よい範囲でディザリングされていた(もう少しピクセル数を減らしても良い)。ちなみにコンポジットして仕上げた結果がこちら。

SH2-157 クワガタ星雲

最後にEdgeHD800での確認結果について

(1)EdgeHD800+(A)PHD2ガイドの比較明合成の画像がこちら

EdgeHD800 + ASI294MC pro 11枚ディザリングの比較明合成画像

拡大画像。11枚撮影で150pix程度の範囲を移動

PHD2のディザリング設定は同じく”Random”モード、ディザリングピクセル数は5pixとしている。上で計算した1画素当たりの画角の関係から、ガイドカメラの5pixelは撮像用CMOSカメラの50画素に相当する。この組み合わせではディザリングの移動量以前に、ガイドカメラの分解能不足が気になる。ガイドカメラの1画素が撮像用カメラの10画素に相当するということになるが、オートガイダーがサブピクセル処理をしているとはいえ10倍は大きすぎるだろう。

コンポジットして仕上げた結果がこちら

IC5146まゆ星雲 ガイドが流れて星像が楕円状になってしまっている。

星像を拡大してみると楕円状になってガイドエラーが発生しているのがわかる。原因は確定ではないが今回計算したようにガイドカメラの分解能不足の可能性は大いにある。追加でEdgeHD800のガイドカメラ用に焦点距離の長い鏡筒を手配した。

 

焦点距離240mmだと、ガイドカメラの1画素が撮像用カメラの5画素相当になるので何とか実用になるのではないかと考えている。

以上、各鏡筒とガイダーの組み合わせ時のディザリングの設定値、新しいガイド鏡の手配まで完了し、次回の観測で効果確認をしてみる予定。

 

おしまい。