でんでんのブログ

釣り、バイク、キャンピングカー、天体写真など記録を兼ねて...

N.I.N.A.へ引っ越し/インストール備忘録

天体撮影に使っているノートPCの1つがとても古くて重いため、思い切って新調することにした。このノートPCはステラショットを入れて使っていたが、これを機に他のノートPCと揃えて全てN.I.N.A.に統一することにした。ステラショットには以下の不満点があった。

・カメラのゲイン設定でオフセットが設定できない

・極軸アライメントで鏡筒の安定停止時間が設定できない

・MGENオートガイダーが使えない(無理やり使えなくもないが...)

これらのうち、まもなくバージョンアップされるもので、カメラゲインのオフセットは対応されるらしいが他の点はそのままのようだったのでN.I.N.A.への移行を決心した。

 

以下、N.I.N.A.のほかドライバー関係も含め、環境構築の覚書として残しておく。

 

・ASCOMプラットフォーム

カメラや赤道儀のASCOMドライバをインストールする前にASCOMプラットフォームをインストールしておく。

ASCOM - Standards for Astronomy

現時点でのバージョンは6.6SP2

・カメラドライバ/ZWOドライバ

Download | ZWO

カメラドライバとASCOMドライバをインストール

 

・カメラドライバ/QHYCCD

私はガイドカメラにQHYCCDを使っているのでこちらのドライバーをインストールする。

Download QHYCCD Drivers | QHYCCD Astronomical & Scientific Camera

ガイド用カメラのドライバー

・オートガイダードライバー/MGEN ASCOMドライバー

MGEN.APP

 

赤道儀用ドライバー/Skywatcherドライバ、アプリ

Sky-Watcher | Sky-Watcher Global Website

 

赤道儀用ドライバー/VIXEN ASCOMドライバー

アップデート情報 | ビクセン Vixen

 

各ドライバのインストール後、アプリケーションソフトウエアをインストールする。

 

・PHD2

- PHD2 Guiding

 

ようやくNINA本体のインストール

・N.I.N.A.

Nighttime Imaging 'N' Astronomy – An astrophotography imaging suite

 

・プレートソルブ用ソフトのインストール

[PlateSolve2][ASTAP]のインストール

以下のサイトから指定の3つをダウンロード

Category: Software | PlaneWave Instruments

PlateSolveのインストールUCACStarCatalogの前にインストールする)

インストーラは無く、ダウンロードした圧縮ファイルを展開し、C:\Program Files (x86)に置く

 

UCACStarCatalogのインストール

インストーラは無く、ダウンロードした圧縮ファイルを展開し、先にインストールしたPlateSolve

フォルダに置く

 

APM Star Catalogのインストール

インストーラを実行

インストール先はPlateSolveのインストールフォルダを指定。フォルダAPMが作られる

 C:\Program Files (x86)\PlateSolve2.28\AP

 

ASTAPのインストール

プレートソルブ用スターカタログのインストール

ASTAP, Astrometric Stacking Program

とりあえず丸印のものを使用

以上でインストールは終了。NINIAのセットアップを行う。

 

・NINAの設定
日本語表示

 

プラグインのインストール

プラグインは沢山あるようだが、とりあえずThree Point Polar Alignmentを入れておく。

[プラグイン]ー[利用可能]を押すと一覧が出てくるので[Three Point Polar Alignment]を選ぶ

・スカイアトラス、フレーミング用の写真イメージデータのダウンロード
ダウンロードページの一番下の方にあるMiscのところに、オフラインで参照できるイメージデータのリンクがあるのでダウンロードする。個人的にはこれが一番便利に感じる。

 

ダウンロード後、展開したフォルダを任意の場所に配置し、その場所をオプションで指定する。

 

これでスカイアトラスとフレーミングで写真イメージが表示される

スカイアトラスの表示の様子

フレーミング画面の様子。写真イメージだと非常にわかりやすい!

・Cartes du Ciel

続いてプラネタリウムソフトをインストールする。私はCartes du Cielを使っている。

en:start [Skychart]

インストールしたら起動して、NINAとの連携用にサーバーの設定を行う。

[Setup]ー[General]メニューの[Server]タブを選び、サーバーとポートの設定を行う。特に問題なければデフォルトで入っている値を使う。

 

NINA側のオプションでプラネタリウムソフトの指定と、上記で行ったホスト/ポートと同じ設定をしておく。

正しく設定できれば、Cartes du Cielで指示した座標がNINAの[プラネタリウムソフトから座標を取得する]ボタンで取得できる

 

以上で(たぶん)環境構築完了。

 

おしまい。

 

オートガイダー不安定の調査

EdgeHD800+Skywatcher EQ6Rのセットで最近ガイドが安定しなくなった原因調査の続き...

調子が悪くなった時期が、ガイド鏡を新しくしたころと一致している。不調のガイド鏡はSV106+QHY5III485C

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鏡筒の固定強度がちょっと気になる方式だが、この辺りも確認する。

まずはガイド鏡をカメラごと別のセットに変えてみる。

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この状態でしばらくガイドした結果がこちら。

?この時点でガイドのばらつきが大きい。新ガイド鏡の影響ではなさそう。こうなるとあとはガイド鏡マウント、鏡筒マウント、赤道儀までの機械的なぐらつきの有無が疑わしい。新ガイド鏡に戻してガイドグラフを撮ってみたが、やはり先ほどと大差はない。

手で触った見たところ特に緩みやがたつきは感じないので、ネジ関係を一通り増し締めしてみた。やや緩そうだったのがレールバーの固定ネジ。あとはファインダー鏡筒のピント調整用のヘリコイドに固定ネジがあったのでしっかり固定しておいた。

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レールバーの固定ネジがやや緩かった。ここが一番怪しい。

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SV102鏡筒には沢山のネジがある。一通り増し締めしておいた。

この状態で再びガイドグラフを確認。

だいぶ良くなった気がする。自宅前での確認はこのくらいで完了とした。

撤収前、ちょうど木星が天頂付近にあったので確認したところ、ちょうど大赤班が見えるタイミングだったので撮像。

ステラナビゲータで確認したら大赤班が見えていたので慌てて撮影

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この日はなかなか良く見え、ピントが合わせやすかった。

WINJUPOSを使うと衛星周辺が少し怪しい...


ガニメデが通過中だったので連続撮影してアニメーションにしてみた。



ガイドの安定性がどうなったかは、11月の観測会で確認する。

 

おしまい。

 

10月観測会 新ガイド鏡安定せず・クエスチョンマーク星雲、魔女の横顔星雲、他

10月の観測の結果

 

・BORG55FL(x0.8reducer)+AZ-GTi+MGEN-3+ ASI294MC

前回までの観測でディザリングの移動量の設定が少なかったので3pix→60pixに変更。

比較明合成した結果がこちら

ディザリングの様子

どうやら想定通りの移動量でディザリングされている様子。

撮影中のガイドグラフの様子。まずまず問題ないレベルで安定している。

撮像結果はこちら

IC1396

SH2-171他 クエスチョンマーク星雲

NGC6960他 網状星雲

IC2118 魔女の横顔星雲 顔、2つある?

・BORG107FL+SX-D2+PHD2+ ASI2600MC pro

ディザリング移動量は3pixのまま、モードをRandomからSpiralに変更した。比較明合成した結果がこちら

PHD2のディザリングの様子。合っているのか?

移動の軌跡が何となくスパイラルっぽいがこれで合っているのか?移動量は問題なさそうなのでこれで様子を見る。

NGC6823

M33 さんかく座銀河

SH2-261

NGC281 パックマン星雲

103P/Hartley彗星

 

・EdgeHD800+EQ-6R+PHD2+ ASI294MC pro

こちらはガイド鏡を焦点距離の長いものに変更したが、そもそもガイドが不安定で星像が点にならず。どこかにガタがあるのか?ディザリングの移動量は問題無さそうだが、移動パターンは同じくスパイラルに設定したが先ほどのとは形が違うような...

移動量はよさそうだが、パターンはこれで正解?
そもそも、星が点になっておらずガイドが不安定。

一応、撮像してみたがやはり星が流れて殆どの画像が使えず。なんとかマシなものを選んでスタックしたが星が楕円になっている。

NGC7293 ガイドエラーで殆どの画像が使えず、残ったものも星が流れている

 

20240506094910

NGC6888 40枚程度撮影したが、ガイドエラーのため使えたのは7枚

 

NGC891 こちらは成功率3割程度

現場ではガイド不安定の原因がわからず持ち帰りの課題となった。

 

後日、自宅前で改めてガイド状態のチェックを行った。

まず、鏡筒を軽量のBORG55FLに変更してガイドグラフをとったのがこちら。

この時点でガイドエラーは1秒角程度。ちょっと大きい...

鏡筒を元のEdgeHD800に戻したところ

少しエラーが大きくなったが、大きな差ではないような...

ガイド鏡を交換してから悪化したような気がするのでガイド鏡にガタでもあるのか?もう少し調査が必要。

とりあえず、木星を撮って撤収。

おしまい。

 

SeestarS50で部分月食観望

29日早朝は部分月食があるとのことで、早起きして近所の河原へ観望に行ってきた。これまで部分月食は何となくスルーしてきたが、今回、SeestarS50で手軽に撮影できそうだったので部分月食初観望に行ってみた。

機材はSeestarS50のみ。手軽で良い。写真は月食の終盤で空が明るくなってきたところ



 

欠け始める前の満月がこちら

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欠け始め。(以下、全てSeestarS50で撮影)



この日最大に欠けたところがこちら。露出を自動にすると大体目視に近い感じに写る。


手動で暗部に露出を合わせるとこうなる。

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1分おきに撮影した。インターバル撮影機能があれば...

部分月食のほぼ全期間をつなげた動画。終盤は大気分散の影響か、歪んでいる



おしまい。

 

SeeStar S50をしばらく使ってみて...

9月末にSeestar S50が届いて以来、天体写真撮影に出かけるときは毎回携行し、写真撮影の合間に電子観望を楽しんでいる。今回は、しばらく使ってみて新しく分かったことを記載しておく。

・水平調整について

Seestar S50は自動導入機能付きの経緯台で、面倒な極軸合わせは不要だが、水平に設置する必要がある。水平が大きくずれていると、アプリ上で水平調整を促すメッセージが現れる。本体内部にセンサーが内蔵されていて、アプリの調整画面に現れる水準器を見ながら三脚の足の長さを伸縮して水平にする。

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しかし、スマホ画面の水準器の表示と足の長さの関係がつかみにくいため、なかなか難しいのだが、最近この作業に煩わされることが無くなった。解決策はとても簡単で、”Seestar S50本体を三脚に装着する前に、三脚についている水準器で水平を合わせてからSeestar S50を三脚に装着する。”というもの。

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設置・調整の順番の問題ではなく、三脚についている水準器を見ながら水平を調整するのと、アプリの水準器を見ながら水平を調整するのでは、直感的な操作感に差があり、前者の方が圧倒的に簡単というのがポイント。また、三脚単体の場合は、水平がずれているときにいきなり足の長さを調整するのではなく、三脚を1本の足のみ高くなる方向に回転させてから、この足を縮めるという方法にすれば、足の長さの調整が1本で済むので非常に楽である。こうすれば、電源投入後にスマホアプリには水平調整を促すメッセージは出なくなる。

 

・LP Filterについて

LP FilterはSeestar S50が導入対象に応じて自動でON/OFFしているらしいが、もちろん手動でON/OFFもできる。いくつかの対象でON/OFFを試してみたが、撮像対象によってどちらが良いかは変わってくるようだ。(この辺は一般のLP Filterと同様かと思うが)光害地だからといってONがいいわけでもなく、できれば最初の数ショット(1分程度)でON/OFFを試してみた方が良い。銀河や星団ではLP Filter無し、星雲では有りが良い傾向だった。

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M33 15分スタック LPFilterあり

 

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M33 11分スタック LPFilter無し

 

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NGC6888 LPFilter有り

 

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NGC6888 LPFilter無し 星の輝度は上がっているが、星雲のコントラストは低下

 

・撮像結果について

手軽に見栄えの良い画像が得られるのがこの商品の良いところ。

手軽さと引き換えに、画角/撮像条件(ゲイン、露光時間)/フィルタはお任せで変更できない。そのため、画角が合わないとか、淡すぎて写らないとかいう対象は守備範囲外と割り切ったほうが良いだろう。撮像した写真は、後処理に時間をかけたからと言って、赤道儀を使って本気で長時間撮影した写真のような結果が得られるわけではないので、PCで頑張って加工しても得られるものは少ない気がする。やはり手軽に見れる範囲の対象を次々と観望するというのが楽しみ方としては合っていそう。

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オリオン星雲 11分スタック

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スマホで階調補正

 

PixInsightで処理

103P/Hartley彗星も一応写った

BORG107FLで撮った103P/Hartley彗星。メトカーフコンポジットでも
この程度なのでSeestarは優秀。

 

Seestar S50が加わり4セットで運用中

オリオン座もやって来た

設置/撤収が簡単で、現在運用中の赤道儀3セットに加えてもあまり苦にならず、撮影の合間に次々と観望できるというのが今の自分の観測スタイルにもあっているので、しばらくはSeestar S50を加えた4セットで楽しむ予定。

 

おしまい。





 

AZ-GTi分解整備、赤経クランプの問題

以前の分解整備の後、長らく好調を維持してきたAZ-GTiだったが、最近稀にガイドが”引っかかる”症状が再発することがあり、前回の分解整備から時間もたっていることなので改めて分解整備することにした。

(前回の分解の様子→MGEN-3ガイド不安定の原因調査(2) - でんでんのブログ

以前にもやっているので分解は特に問題なく進んだ。

まずは赤緯クランプを外す

ケースを留めているネジは6個。まずは上面のこの2つを外す。

側面の4つのネジ。ネジを全て外すとケースが開く。

黒ケース側の基板に繋がったハーネス2つのコネクタを外す

メイン基板は2つのネジを外すと外れる。

エンコーダーカバーは2か所のネジを外すと外れる。

ネジ4本を外すとエンコーダーリングが外れる。センサーに引っ掛けないように外す。

アルミナットの側面にあるイモネジ(2か所)を緩めると、アルミナットが外せる

赤経軸のアルミナットを固定するイモネジ2か所を緩めると、アルミナットが回るようになるので、このナットの締め込み量を調整し、がたつきが無くかつスムーズに回る位置に調整するのだが、今回は摺動部分の清掃とグリスアップも行うのでこのアルミナットも外して分解を進める。

アルミナットを外すと、ワッシャーの下にスラストベアリングが現れる

アルミナットを外すと赤経軸が外れる。アルミナットの下にはワッシャー、スラストベアリングが入っているのでこれを外すと、テーパー形状のアルミスペーサーが現れる。

テーパー状のスペーサー。赤経クランプ固定の仕組みがここにある。

外れた赤経軸には、同じくスラストベアリング、ワッシャー、ウォームホイールがあり、最後にゴム状のシートを挟んで三脚への固定部となる。

赤経軸とウォームホイールの固定部分。ゴム状シートの摩擦力で固定される


テーパー状のスペーサは赤経クランプ固定ハンドルがつながった同じくテーパー状の部品に接している。これで赤経クランプの固定方法が明らかになった。クランプ固定ハンドルを締め付けていくとこのテーパー状の部品が赤経軸方向へ押し出されることで赤経軸が引っ張られ、赤経軸がウォームホイールに押し付けられる摩擦力で固定されるという仕組み。備忘のために図にしてみた。

赤経軸の模式図


つまり、赤経軸固定用のクランプを締めつけると、軸がウォームホイールに押し付けられ固定されるが、同時に同じ力がスラストベアリングにかかるということ。いくらスラストベアリングだとは言え、圧をかけた状態だと回転抵抗になりよろしくない。かといって圧をかけないと赤経軸のクランプ固定ができないという構造。これは設計ミスでしょう...文句を言っても仕方ないので、赤経軸の固定は最低限の締め付けで使用するという運用で行くしかない。締めすぎてはいけません!

一通り分解が終わり、構造も明らかになったので清掃、グリスアップして組み立てる。

ウォームホイールと軸を固定するゴム状シートの摩擦力が非常に大事なので、脂分をしっかり取り除いておいた。ウォームホイールが近く、グリスが回り込んだりすると大変...

常に圧がかかり続けることが判ったスラストベアリング。しっかりグリスアップ

赤緯軸は前回の分解と変わりないので省略...

 

おしまい。

 

オートガイダーの設定/性能確認

8月の観測時にMGEN3とNINAの連携でオートガイドのディザリングがうまく動いていないのではないかという疑惑があったが、今回はこの動作確認と、ついでに他のガイダーの機能/性能確認を併せて行ってみた。

(ディザリング不良疑い→ビクセン・ワイヤレスユニット購入 - でんでんのブログ

まずMGEN-3オートガイダーについて、今回改めてテスト用に撮影を実施。機器構成は以下の通り。

-----------------

赤道儀:AZ-GTi

鏡筒:BORG55FL+reducer

カメラ:ASI294MC

ガイドカメラ:MGEN-3

ガイド鏡:KowaLM100JC

撮影ソフト:NINA

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NINAへのMGEN-3の接続は問題なし。

NINAにオートガイダーとしてMGEN-3を接続したところ

赤道儀(AZ-GTi)の接続も問題なし

NINAへ赤道儀を接続したところ

ディザリングの設定はMGEN-3で条件の設定、NINAで有効/無効の設定を行う。

ディザリングの条件設定はMGEN-3側で行う。移動量は3pixelとしている。

試し撮りはNGC7293でおこなった。撮影中の進捗画面では、1撮影毎にディザリング動作が行われていた。

テストなのでゲイン高めで短時間露光で30枚撮影

撮影した30枚を比較明合成した結果がこちら。

30枚を比較明合成したところ。一応、位置はずれているがこれで正しいのか?

拡大してコンポジット画像と比較

拡大して確認すると、一応位置はズレてディザリングされているように見えるが、ひとかたまりの範囲と、少し離れた3か所程度に移動しているようで移動の規則性がよくわからず。ここでようやくMGEN-3のマニュアルでディザリングの仕様を確認してみた。

マニュアルには以下のように記載されている。

------MGEN-3マニュアルから抜粋ーーーーーーーーーーーー

Dithering shifts around the guide star in a random way, but not further and further away from the initial position of the first exposure, rather it stays in its vicinity. The size of this area is controlled by the dither diameter (in pixels of the Mgen-3 camera). If it is necessary to choose another position as a reference, go to the Control page and check the new reference pos. box. The new positions calculated during dithering will now be spread around the new initial position.

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これによると、ガイド星の周りを、指定したピクセルの範囲内でランダムに移動するということらしい。撮像結果で、固まりの範囲内でうろうろしているように見えるのはマニュアルの記述と一致しているが、3か所ほど離れた位置に移動しているのはイレギュラーな動きで何らかのガイドエラーがあったのかもしれない。

ディザリングは仕様通り実行されていそうなことが判ったが、今の設定(3pix)ではディザリングの移動範囲が狭く、ディザリングの効果が不十分ではないかと思われる。撮像に使うイメージセンサ上で数ピクセルずらせばディザリングの効果はあるらしいが、ガイドカメラのピクセル数とどういう関係で、設定をいくつにすればよいかまじめに考えてみる。

ここで考えないといけないのは、ガイドカメラの1ピクセルが、撮像カメラの何ピクセルに相当するかということになるので、最近よく使っている鏡筒、CMOSカメラ、ガイドカメラの数値を確認してみた。

ーー[鏡筒・CMOSカメラの組み合わせと、1画素当たりの画角]ーー

(1)EdgeHD800 + ASI294MC(4.63um)
    ATAN(4.63um/2000mm)=0.000133(deg) = 0°00'00.48"

(2)BORG107FL + ASI2600MC Pro(3.76um)
    ATAN(3.76um/600mm)=0.000359(deg)= 0°00'01.29''

(3)BORG55FL(x0.8)+ ASI294MC(4.63um)
    ATAN(4.63um/200mm)=0.00133(deg)=0°00'04.78"

 

ーー[ガイド鏡・ガイドカメラの組み合わせと、1画素当たりの画角]--

(A)SV165 + QHY5III485C(2.9um)
    ATAN(2.9um/120mm)=0.00138(deg)=0°00'04.98"

(B)BORG25 + QHY5III174C(5.86um)
    ATAN(5.86um/175mm)=0.00192(deg)=0°00'06.91"

(C)MGEN-3(3.75μm)
    ATAN(3.75um/100mm)=0.00215(deg)=0°00'07.73"

 

以上を参考に、ディザリングの設定は以下の方針で設定してみる予定。

・ディザリングの1回の移動量は、撮像用CMOSカメラ上で最低5画素程度を目安にする

・撮像枚数が増えた場合にディザ移動量が大きくなりすぎないよう、合計で50~100画素程度の範囲にする

 

例えば(3)BORG55FLに(C)MGEN-3の組み合わせであれば、MGEN-3の1ピクセルがASI294MCでは1.1ピクセルに相当し、MGEN-3での設定ピクセル範囲内をランダムに移動するということなので、60pix程度を設定する。

 

続いて、(2)BORG107FL+(B)PHD2ガイドの比較明合成の画像も確認してみた。

BORG107FL+ASI2600MC pro 21枚ディザリングの比較明合成

拡大画像。21枚撮影で150pix程度の範囲を移動


PHD2のディザリング設定は”Random”モード、ディザリングピクセル数は5pixとしている。上で計算した1画素当たりの画角の関係から、ガイドカメラの5pixelは撮像用CMOSカメラの27画素に相当するため、MGEN-3の実験画像に比べるとかなり大きく移動しているが、21枚撮影での移動範囲は実測で150pixel程度と、たまたま程よい範囲でディザリングされていた(もう少しピクセル数を減らしても良い)。ちなみにコンポジットして仕上げた結果がこちら。

SH2-157 クワガタ星雲

最後にEdgeHD800での確認結果について

(1)EdgeHD800+(A)PHD2ガイドの比較明合成の画像がこちら

EdgeHD800 + ASI294MC pro 11枚ディザリングの比較明合成画像

拡大画像。11枚撮影で150pix程度の範囲を移動

PHD2のディザリング設定は同じく”Random”モード、ディザリングピクセル数は5pixとしている。上で計算した1画素当たりの画角の関係から、ガイドカメラの5pixelは撮像用CMOSカメラの50画素に相当する。この組み合わせではディザリングの移動量以前に、ガイドカメラの分解能不足が気になる。ガイドカメラの1画素が撮像用カメラの10画素に相当するということになるが、オートガイダーがサブピクセル処理をしているとはいえ10倍は大きすぎるだろう。

コンポジットして仕上げた結果がこちら

IC5146まゆ星雲 ガイドが流れて星像が楕円状になってしまっている。

星像を拡大してみると楕円状になってガイドエラーが発生しているのがわかる。原因は確定ではないが今回計算したようにガイドカメラの分解能不足の可能性は大いにある。追加でEdgeHD800のガイドカメラ用に焦点距離の長い鏡筒を手配した。

 

焦点距離240mmだと、ガイドカメラの1画素が撮像用カメラの5画素相当になるので何とか実用になるのではないかと考えている。

以上、各鏡筒とガイダーの組み合わせ時のディザリングの設定値、新しいガイド鏡の手配まで完了し、次回の観測で効果確認をしてみる予定。

 

おしまい。